醸 造
SAKE Making
 
 『 蔵の歴史と経緯 』
江戸時代前期、現在の長野県中野市には、中野・西条・新野・金井に天領(幕府領)の陣屋が置かれていました。
享保9年(1724)までに中野陣屋に統合され、中野陣屋は5万石余の天領を支配する信州随一の陣屋となります。
慶応4年3月(1868)王政復古の大号令のもと、尾州御取締中野御役所となり、同年8月に伊那県が創設されると、伊那県中野分局となります。
明治3年10月(1870)中野県が分置され、現在の長野県庁の前身である中野県庁となります。
明治3年12月19日から20日にかけ、「中野騒動」いわゆる世直し一揆が発生し、中野県庁やその周辺の特権的豪農商や陣屋時代の取締役の家等が襲撃され、500軒余が焼失します。 当蔵も被害に会い、現在の蔵の所在地に移動します。

「中野騒動」により、古い資料の多くを焼失したため正確な創業の年代や蔵元の代数は不明です。
しかし、嘉永6年(1853)には酒造業が行われており、家の代数も6代前までは判明しています。
一方で、蔵に残る石灯篭には文政12年(1825)と刻まれており、「井賀屋」という屋号はかなり古くから続いていたと思われます。 当時、酒造業の権利は売買されており、その際に屋号も併せて売買されることも有り、「井賀屋」という屋号は様々な家によって引き継がれてきた屋号です。
明治34年(1901)に現在の小古井家が屋号を引き継ぎます。

当時の蔵元、小古井諦造が良い酒を造るための仕込み水を探し求めていたとき、生家「岩舟」で湧いていた清水を用いて酒を仕込んだところ、非常に美味しい酒が出来たことから「岩清水」が誕生し、現在に至ります。


 『 信州の酒米 』
良質の水と太陽、適度な風、正常な空気に育まれた信州の酒米には、全国的に有名な美山錦をはじめ、しらかば錦、たかね錦、金紋錦、ひとごこち に加え、山恵錦も登録され6つに酒造好適米になりました。
当蔵で便用する酒米は2017年産よりすぺて地元である『長野県中野市産』を便用しております。長野県中北東部に位置する中野市は、手曲川と夜間瀬川が流れ、河岸段丘や扇状地から成る地域です。気温の日較差が大きく、降水量が少ない当地で栽塔されるお米は極上の品質を誇ります。

現在「岩清水」では長野県が指定する酒米、美山錦、ひとごこち、山恵錦の3種類を便用しております。

当蔵で便用する酒米はすぺて地元の農家様と直接契約し、弊社のためにお米を「減農薬・減化学肥料」で作っていただいており、栽培方法・土壌を分析し、作付けする水田を選定・指定するなど、各ブランドに最適な酒造米を育成する原点を大切にしています。


 『 信州の水 』
豊かな自然に恵まれた信州の水は生命力溢れる日本酒を生み出します。水は日本酒中の80%を占め、酒を造るにはその20倍の仕込み水が必要です。
信州には広く「日本の屋根」として親しまれる山々が有り、山肌を伝わって流れる水は、長い年月をかけて大地をくぐり抜けて地上に姿を現します。

当蔵では非常に柔らかい水質の超軟水を使用しております。それは、麹の歩合を増して造る当蔵独自の製法に必要不可欠であり、生命力の強い麹を仕込みに使用することにより、ビタミン類や酵素が強く醗酵が過剰にならない様にコントロールするためなのです。


 『 信州の気候 』
信州中野の真冬は1メートルを超える積雪となり、寒い時期には 気温が-10°Cを記録します。そんな極寒の気候風土を利用して一般的な酒造りと同じくかつては厳冬期に酒を仕込んでおりました。
しかしながら2017年大きな設備投資を行い、酒母室・もろみ醗酵タンク・槽場を冬同 様に低温管理できるようになり、より時間をかけて一年中仕込めるようになりました。

低温で仕込むことにより、酵母の醗酵がゆるやかになり、酒も荒々しさがなくなり、新酒の時点で柔らかく美味しい酒になります。

また、当蔵独自の「5割麹」技法にも低温による醸造は欠かせません。


 『 麹造り 』
当蔵独自の「5割麹」技法に最も重要な要素のひとつは「麹造り」です。非常に柔らかい水質の超軟水を使用することで、従来の醸造に寄与していたミネラル分が少なく、麹の力を高めることが必要になります。
また、この麹により、仕込み後も長く麹が働くことで、当蔵の特徴である低アルコールにかかわらず、しっかりと酸が効いた味わいが生まれます。

 『 時間を惜しまない 』
「岩時水」らしい魅カ、面白さを味わっていただくならやはり『生酒』です。
日本酒の生酒は全てのアルコール飲料の中で唯一ブドウ糖が増す魅力あるお酒です。また麹由来の酵素が生きており、日々熟成し味のりします。 日本酒はしぼりたてが美味しいと言われることも多々ありますが、「岩清水」では搾ってからの熟成も楽しんでいただきたいのです。
「生酒」こそが日本酒最大の神秘であり、追及すべきところだと考えています。

そのためには、変化しやすくデリケートな生酒に搾りの工程も含めてストレスを掛けない様に時間を惜しみなく使い醸造しています。また、搾る過程から-5℃以下を保つ様にしています。